2011年10月03日

「彼らの犯罪」-樹村みのり-



古い漫画「翼のない鳥」を探した末、たどり着いたのは、樹村みのりの近年の本だった。
(といっても書かれたのは90年代のはじめだが)
70年代に青春を過ごしていた樹村みのりらの年代は、当時の少女向け漫画にも、その影を残しているものが所々あった。
そういうモチーフにまったく触れない漫画家と、社会を反映させる漫画家とがいたが、樹村みのりは当時から後者の方だったと思う。
曖昧もことした人の心もようを描くと秀逸だった。
そういう作家達は、凄いヒットを飛ばすことなく、そのうち姿を消したと思っていたが、知らない所で大人の読む漫画を描いていた。
ささやななえもその一人だが、数年前、彼女の描いたDVを題材にした本で、そのリアルな内容に物凄く気分が悪くなった。
しかし、今回の樹村みのりの「彼らの犯罪」もそれに匹敵するものだった。
話しは女子高生コンクリート殺人事件の裁判を追ったものだ。
この事件で一番に疑問だった、監禁された舞台となった家人のことを理解できた。
この家の大人と少年たちとの関係は、まるでDV家族のようだったのだと。
大人たちはナメられていてまるで無力だった。
彼らの残虐さは、吐き気をもよおし食欲を失くさせるのに充分すぎるものだったが、
その内容は、裁判中のやりとりとして淡々と事実だけを表しながら描かれている。

他にも「親が 殺す」は、家庭内暴力の息子を父母が共謀して殺害した事件。
父母ともに、社会ルールでは申し分ない実直な人柄で、父は高校教師。
しかし、決してエリートならではの事件、というようなくくりで片づけられるものではなく、
家族という狭い囲いの中で起きる、人の心理の異様さを感じる。
父母ともに、よそに相談することもなく、もう限界だと殺すことしか思いつかなかったという。
そして、それは学校に辞表を出したその日、息子が寝静まった後に計画的に行われ、
殺さないでと懇願する息子を、もう遅い親の手で死なせてやると、滅多刺しにする。
殺害シーンを振り返るネームの上手さ、そして息子の心の声の描き方には心をつぶされる。

お父さん
こわい夢を見たよ
お父さんと お母さんが ぼくを殺そうと
部屋に入ってくるんだ
ああ 本当にこわい夢だった
夢で……よかった……

やっぱり樹村みのりの「翼のない鳥」は探して読もうと、あらためて思うのだった。
posted by メイ・シオン at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | カウンセリング&セラピー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする