2016年08月04日

ドッペルゲンガー

その頃、いつも同じ時間の電車に乗るため、同じ時間に家を出た。
朝は、大抵ギリギリで、毎日小走りだったり速足だったり…

そんな東松原駅まで行く途中で、頻繁に会う女性がいた。
どこで合流するのかわからないが、必ず私の前を歩いていた。

どうしてその女性を覚えているかというと…
後姿が私にそっくりだったから。

腰くらいまでの長い髪に編み込んだようなウェーブ。
手を振りやや大股にきびきびと歩くさま。
そして、身につけたファッションもなんだか似ている。

どんな人なのかいつも気になっていた。

ある日、この人がどんな顔なのか見てみたくなって、
その後ろ姿を追って、追い越そうといつもより速足で歩いてみた。

しかし、あちらも相当な速足で、いつまでたっても距離が縮まらない。
駅に着くとホームに滑り込んできた列車に、駆け込むように乗ってしまった。

朝の混んでいる電車内をそれ以上捜索することはできず、
また会った時にしようと諦めた。

そして、また彼女に会う朝があった。
駅まで行く長く緩いくだり坂の一本道。
遥か向こうで速足に歩いていた。

遠いなぁ、追いつくか走ってみようと思い、
緩い坂道を小走りでくだって行った。

少しずつ少しずつ、彼女の背中が近くなった。
よし、もう少しだ…と一本道の終わりを曲がると、
既に彼女の姿はなく、また顔を見ることはできなかった。

そうやって、いつもいつも背中だけの彼女を追いかけた。
しかし、いつまでたっても追いつくことができず、
ホームでやっと数メートルまで近づいたにもかかわらず、
駆け込み乗車で彼女だけが列車に乗り込んでしまった。

そのうち、彼女に会うことは少なくなっていった。
その後、東松原を越してしまった私は、
二度とその姿をみることは叶わなくなった。

今でもときおり思い出す。
あの緩いくだり坂を長い髪をたなびかせ速足で歩く彼女の背中。

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2014年08月04日

カッコいいおばあちゃん

せみがミンミンと鳴き、地面から湯気が出ている灼熱の暑い夏の日。
カッコいいおばあちゃんに会いました。
見た目は、農業で長年、太陽にさらされたのか、かなりしわくちゃで、
腰も曲りよたよたしたおばあちゃんです。

駅ホームのベンチを手枕にして、地面に座りこみ顔を突っ伏している青年がいました。
ややすると、隣に座っていたおばあちゃんが何やら話しかけています。

「大丈夫か?」
「頭痛いの?」
青年は声も上げず、わずかに首をたてに振っています。

おばあちゃんは手持ち袋からかがまぐちを探り小銭を取ると、
年寄りならではのよたよたとした歩きで自動販売機に向かい、
小さな玄米茶を買いました。

青年に声をかけ、冷えたお茶をベンチに置くと、
よたよたとした歩きで、颯爽と去って行きました。

颯爽とです。
私には、そう見えました。

カッコいい〜!!
こんなおばあちゃんに私はなれるでしょうか。

青年はというと、お茶を渡されると、かばんから財布を出そうとしていましたが、
「いいよ」と促されるおばあちゃんに従ってそのままお礼を言っていました。

せみがミンミンと鳴く、うだるような灼熱の暑い夏の日でした。
posted by メイ・シオン at 15:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月17日

井の頭線物語り-南武線のジェントルマン

夕刻の南武線はとても混んでいた。
学生さん、帰宅する会社員。
家路へ急ぐお父さん、お母さん、おじさん、おばさん。
そして…
もみくちゃにされた車内での異変は、乗ってから数分で起きた。
私に背を向けた初老の男性の正面に、少し小太りな若い青年がいた。
彼は、優先席付近の手摺りを握り、
ぎゅうぎゅう詰めの車内で身体震わせている。
人の隙間から足元を見ると、どうにもおぼつかない。
うっ…酔ってるのかな?

倒れまいとしながら、足元はぴくぴくと痙攣している。
重たそうな身体を支えようと手摺りを握りなおしているが、
混雑の中、身体を立て直すのが精一杯なようすだ。
少しの間、様子を見ていたが、だんだんと態勢を崩し、
その場に倒れかけた。

私の前の初老の男性の目にも、それは映っていた。
初老の男性が「あぁ…」と青年に手を貸そうと声を発すると同時に、
私もその青年の背中に手を伸ばし「大丈夫?具合悪いの?」と声をかけていた。
すると青年は背を向けたまま「脚が悪いんです…」と小さな声で答えた。

私は、やや大きな声で
「脚が悪いのね。」
「誰か座らせてくれれば良いんだけど…」と言った。
すると、初老の男性は「どこまで行くの?」と青年に聞いた。
青年は「立川です」と答えると、続けて初老の男性は、
「立川は遠いいなぁ…誰か座らせてくれると良いなぁ」と、
誰に言うともなしに、優先席を探った。

私から優先席は見えなかったが、初老の男性からは見える位置だった。
ややして、優先席付近に動きがあり、おじさんが席を譲ってくれた。
席に着くのも一苦労な混雑だったが、初老の男性の手助けもあり、
青年は無事、席に着くことができた。

青年が落ち着くと、初老の男性は、振り返り私に会釈をし、
席を譲ってくれたおじさんにも「ありがとう」と言った。
数駅過ぎた所で、初老の男性は、降りて行った。

降り際にもおじさんに「ありがとうございました」と、
爽やかに挨拶をして。
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2013年03月29日

井の頭線物語-2013春の渋谷東急東横店のさよなら-

久しぶりに井の頭線に乗った。
渋谷周りで浜松町へ行くためだ。
最近は都心に用があっても、もっぱら新宿周りか地下鉄経由。
世田谷にいた頃は、毎日乗って渋谷まで通勤した。
もう30年も前、入社した頃、仕事がなくなるなんて思いもしなかった。
もし、親会社が傾かなければ…
もし、バブルもなかったら…
もし、会社が渋谷から移転しなければ…
そのまま今でも会社員で、渋谷に通っていたろうか?

井の頭線の車窓からは、桜や菜の花たちが昔と変わらぬ春を告げている。

…前に住んでいた東松原にある寺には、新しい建造物が建っていた。
学生時代に毎日のように遊んでいた下北沢も、先日、小田急線が地下になり、
神泉手前のバラ園を持つ家は、マンションに変わっていた。
子どもの頃から馴染み深い渋谷東急東横店も、
東横線地下化のため78年間あった建物が無くなる。
毎朝、会社への通勤路としてヒールで走り抜けたのれん街もなくなる。

どうもかしこも、様変わりしていく。
それだけ年月が経っている証拠。
けれども、そこに在った風景がなくなってしまう淋しさ、
違うものになってしまう儚さはもの哀しい。

さよなら、私の知ってた井の頭。
さよなら、私の知ってた渋谷。
さよなら、私の知ってた世界。

そして、私は「現在(いま)」を、
日々の暮らしに埋もれて、変わらず、生きていくんだ。

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2011年02月27日

ドレッドとじいちゃん

開かずの踏切待ちで、ドレッドヘアーにチョッパーバイクの若者と
チャリのじいちゃんが、横並びで何やら話してる。
踏切の音でよく聞こえないのだが、開かないまま次の電車が来てしまったのを
「また来ちゃったよ〜」などと話しているようだ。
知り合いなのか?
と思いきや、そうではないらしい。
じいちゃんは、ドレッドのバイクのハンドル中央にある黒い筒を指し、何やら言っている。
ドレッドは「灰皿です」と答えた。
彼はエンジンをかけたままなので、声が大きくなっていた。
じいちゃんの声は聞こえず、見た目にもリアクションは薄く、ふ〜んという感じ。
ドレッドは続けて、灰が飛び散らないようカバーがされている優れものであることを説明する。
特段話しが弾むこともなく、会話が途切れたかと思うと、
じいちゃんはまたドレッドのバイクハンドルに付いていた、
金属のジャラジャラしたものに触っている。
ドレッドは「キーホルダーです」と説明する。
じいちゃんのリアクションはまたまた薄いのだが、
ドレッドは、必ずその後も会話を続けようとフォローしている。
おかしい。
おかしいぞこの光景。
道端で会わなければ、接点もないであろうこの組み合わせ。
耳をダンボにしたまま、ニヤニヤしてしまう。
ほどなくして、踏切が開いた。
ドレッドは、じいちゃんに挨拶をして走り去って行った。
じいちゃんは、手がたなでドレッドを見送り、チャリで私を追い越して行った。
少しの間、私のニヤケ顔は続いた。
posted by メイ・シオン at 14:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月13日

手袋たち

隣に座る老婆は、尋常でない量の荷物を抱えていた。
背中には、今にも紐が切れそうな、使い古されたリュック。
座布団が入りそうな大きな紙袋には、パンパンに荷が詰まっている。
その紙袋に無理やり詰め込まれ、顔だけ出している手提げ。
老婆は、降りる駅で立ち上がろうとするが、電車の揺れもあって中々動けないでいる。
手すりにつかまりながらやっと立ち上がると、よろよろしながら出口へ向かった。
「あっ!」
私がマスクの下から思わず叫んでしまったのは、老婆の足元に群青の手袋が見えたから。
若い人なら「落ちましたよ」で済む所だろうが、ここで声をかけても気づかずに降りるだろう。
このままじゃ間に合わない!
叫ぶと同時に、置き去りにされた手袋を拾い、降りようとする老婆の腕を叩いた。
はっ!と振り返る老婆に手袋を渡すと、身なりよりもずっと若々しい声で、
「あ、ありがとうございます」とお礼を言った。
もしかしたら、まだ60才くらいかも…?
なんだか酷くくたびれた様子が、とても年老いて見えただけかもしれない。
片方の手袋が置き去りにされないで良かった。
忘れ去られ、誰にも拾われない手袋が、床でもみくちゃにされている姿は、
想像するだけで哀しい。

この日、井の頭線の終点渋谷で降りた後、銀座線へ向かった。
銀座線の始発駅である渋谷のホームは、やけに狭い。
人が縦に5人も並べば、後ろが団子状態になってしまう。
そんな混み込みのホームに、空の電車が滑りみドアが開いた。
「あっ!」
今度は心の中で叫んだ。
開いた戸口の床には、黒地にゴールドチェーンがついた双の手袋。
可愛そうに…
今度は、完全に置いてけぼりにされた手袋だ。
きっと、バックか何かにかけてそのまま落ちてしまったのだろう。
さっきまで乗っていた人は、既にいないからもう主の見つけようがない。
ドヤドヤと人々が足早に車内に入り、空の席を我先にと座る。
ホームにあふれていた人々が、車内に収まると、一人のおじさんが叫んだ。
「すいませ〜ん。どなたか手袋落としませんでしたか?」
その黒にゴールドチェーンの手袋の持ち主はいないから、当然誰も応えない。
私はおじさんに「それ、始めから落ちてたみたい」
とマスクの下から笑って言った。
すると、おじさんは、
「あ〜そう、やけにホカホカだったから…」と笑って、
網棚の上にそっと、その手袋を置いた。
きっとこの手袋は、持ち主不在のまま、落し物倉庫に行くのだろう。
大抵は、主が現れないまま、そのうち処分されてしまう。
可愛そうに。。。
けれども、おじさんのおかげで、主からはぐれても、
床で踏まれてもみくちゃにされなかったことだけが、唯一の救いだろうか。
posted by メイ・シオン at 12:00 | Comment(5) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月24日

井の頭線物語り-南武線のおっさん

何ともうららかな春が近づいている。
井の頭線は学生さんや勤め人、昼頃ならお出かけの老婦人に出くわす。
今日昼頃、南武線に乗るとハイリキ缶チューハイ片手のおっさんに出会う。
昼から飲んでて気分もいいんだろうなぁ。
おっさんは少しすると、もう一つの手にポッキーを握りしめていた。
あれ?
荷物も持たないのに…そのポッキーはどこから…?
こっそり観察してみる。
チャラララララ〜ン♪
おっさんはマジックのように上着の内ポケットから、
ポッキーを取り出し、ポリポリポリ…
一口飲んでまたまたポッキーを取り出しポリポリポリ…
何だか楽しそう。
ハイリキを飲みながらポッキーのマジック。
いやはや南武線…
posted by メイ・シオン at 00:00 | Comment(8) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月19日

井の頭線物語り-早春のおねいさん

電車とは不思議なもの。
それぞれが目的地を目指して乗り合う一つの箱。
その中で垣間見るドラマや人のありさま。
一つの空間にそれぞれが別の世界を持ち、時に、図らずも交わったりする。
それが興味深く、可笑しく、時に切なく哀しい。

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posted by メイ・シオン at 00:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月25日

井の頭線物語り−別れの儀式−

その日もこんな混雑した井の頭線に乗っていた。
もう、あれから3年経ってしまったんだ。

その日、私は、渋谷からの満員電車の中にいた。
夜の9時も半ば過ぎたころ。
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posted by メイ・シオン at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 井の頭線物語り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする